今回皆さんにお届けする旅は、北の大地、北海道。
冬には雪が降り積もり、気温も氷点下という過酷な環境にある土地だが、そんな酷寒の地ならではの世界もある。
今回の北海道旅行では、そんな酷寒の冬の道東に敢えて訪れることにした。

二泊三日の行程で、まず最初に向かったのは、流氷と刑務所の街、網走である。
-関連記事-
【旅行記】酷寒の冬の道東旅行Part2-釧路と網走をつなぐ鉄路-
【旅行記】酷寒の冬の道東旅行Part3-釧路湿原の神、タンチョウ-
道東へのフライト

東京から網走へ向かうには羽田空港から女満別空港へ行くのが一番早いだろう。
女満別行きの直行便はJALと北海道の翼、AirDoが就航している。ANAユーザーの私はAirDoのコードシェア便を利用することになる。

AirDoの座席のカバーは機内サービスで提供されているほたてスープがこれでもかという勢いで推されている。もちろん飲んだよ、ほたてスープ。

女満別空港は小さなローカル空港。

女満別空港に着陸し、預け荷物を受け取ったら連絡バスで網走方面へ向かう。
この日飛行機は10分ほど遅れて到着したが、連絡バスは飛行機に合わせた運行なので、預け荷物の受取の様子を運転士さんが確認してから出発する。なので飛行機が遅れてもバスに乗り遅れる心配はない。地方のローカル空港ならではのサービス。
バスは相席も出始めて最終的には7割ほどの座席が埋まったくらいの乗車率だった。
ちなみに網走への直行バスではなく、路線バスを兼ねているので途中でちょこちょこ乗降があった。
早速北の大地を感じる

私は網走市街まで乗車せず、まずは博物館網走監獄を訪問するので、途中の「天都山入口」というバス停で下車する。私含め3人が下車した。

天都山入口のバス停は、網走川沿いにあり、すでに酷寒の北の大地の雪景色のど真ん中といった風情がある。

こんな猛禽がバサバサと飛んでいる。
天都山入口から博物館網走監獄までは10分ほど歩くのだが、天都山の名の通りほぼ上り坂だった。
が、普通の道路なので、雪山の中で遭難…なんてことは起こらなそうである。

雪道の坂を登っていると、前方の道路を小さな影が横切った。
その影が進んでいった先の木を見上げるとエゾリスがこちらを見ていた。
もちろん野生のリス。北海道の大地を歩き始めてものの5分での出来事である。

そうこうしているうちに網走監獄の門が見えてきた。
北海道開拓の歴史、網走監獄

雪の中お勤めご苦労様です、人形だけど。

網走監獄に保存されている施設は刑務所だけではない。こちらは裁判所。

温度計は氷点下2度に届かないくらいの気温。
これでも今年は暖かい方。

一番有名なのは「五翼放射状平屋舎房」だろう。
放射状に舎房が建てられていて、中央に置かれた監視部屋から一目で様子がわかるようになっている。
木造の行刑建築としては世界最古になるらしい。

人形で監獄の生活が再現されている場所もある。


網走監獄の暖房事情は個人的に気になっていた事なのだが、極悪人が収監されていたとはいえ、ちゃんと暖房は気を使われていたようだ。

ふと外を見ると風が雪を巻き上げ、過酷な冬の網走の刑務所を演出していた。
そもそもなぜこの酷寒地に刑務所ができたのかという疑問が湧くが、この博物館はそんな理由も含めての展示になっている。中でも監獄歴史館で見られる監獄体感シアターは透過映像、音響、照明、装置などの没入型のシアターは訪れた際は是非とも見て欲しい。
古い刑務所だけではなく、今日の北海道につながる歴史として、博物館網走監獄が存在する意義があるのだと私は感じた。

とはいったが、もちろん行刑施設としての工夫や歴史も見ることができる。

格子は斜めになっているのも工夫の一つ。

看守目線で見ると、房内がこのように見ることができる。

が、囚人目線で見るとこうなる。
向かい側の囚人とコミュニケーションが取れないようにされている。

鉄格子がはめられた窓の向こう側はやはり酷寒の世界。

悪さをした囚人はこの独房で反省させられる。戸をしめると内部は真っ暗になる。

時間が管理されていて、私語もできないのだが、それでも囚人にとってはお風呂の時間は楽しみの一つだったようだ。

石鹸は盗難対策のために紐で吊るされている。

北海道と刑務所の歴史を見た後は、博物館網走監獄の名物レストラン、監獄食堂でランチタイム。
このレストランの何が名物かというと、刑務所の受刑者が食べている食事が体験できるというもの。
平日の訪問でもちょうどお昼時だったのでかなりの客が並んでいた。
だいたい30分くらい待ってやっと席に着くことができた。

監獄食の内容は、麦ご飯、焼き魚(さんまとほっけの2種類ある)、おかず2品と味噌汁。950円(訪問時点の価格)になっている。このメニューは現在の網走刑務所の昼食として出されている食事を再現したもので、実際には味噌汁ではなく番茶が出されるそうだ。
ラーメン類だったり丼もののメニューもあるのだが、もちろん皆監獄食を注文していた。
博物館網走監獄には、じっくりと各施設を見学して、監獄食を食べた時間も含めて3時間強の滞在時間だった。
そういえば昨今の観光地は、日本なのに日本語が聞こえてこないくらいの訪日観光客が多い気がするが、北海道についてからは聞こえてくる会話は日本語が多くて謎の安心感があった。
もちろん外国人もいるのだが、彼らも日本語を話している人が多かったので、北海道は訪日観光客の中でも玄人向けなのかもしれない。

そろそろ網走監獄を出所しようという頃、予約していた流氷砕氷船「おーろら号」から一通のメールが入った。おーろら号は流氷がない場合は遊覧船として運行するのだが、この日は流氷がないどころか波風が強すぎて船すら出れないとのことだった。
オホーツク流氷館
おーろら号が出ないので、網走監獄の近くにあるオホーツク流氷館に訪問した。
私以外にもやはり本物の流氷の代わりにという訪問者が多く、例年の倍近くの来客数になっているらしい。

流氷館に着いた時には雪は一段と強くなっていた。

流氷館は、流氷関連の展示施設とショップ、カフェ、レストラン、そして屋上には展望台がある。

990円の入館料が必要になるのは地下の展示エリアのみ。
階段を降りていくのだが、これは海中に潜っていくという演出になっている。
5面スクリーンと音響による没入感たっぷりの「流氷幻想シアター」は必見。
オホーツク海の綺麗な映像に、本物の流氷が見られなかった無念も相まって感涙ものだった。
先ほどの網走監獄の監獄体感シアターのそうだったが、映像への力の入り方が凄すぎる。

オホーツクの海生生物が展示されている。


流氷体感テラスではマイナス15度の室内に本物の流氷がある。
濡れタオルを振ると凍るという有名なアレを体験できる。

本物の流氷。
上にはアザラシ、キタキツネの剥製がある。
展示エリアは15分もあれば回れるくらいのボリュームだった。

屋上の天都山展望台。テレビ・ラジオの電波を送信する網走送信所が隣接されているので大きなアンテナが何本も立っている。

眼下に見えている白い雪原は網走湖。
結氷しているところには野生のゴマフアザラシが過ごしていることもあるそうだ。
博物館網走監獄も、オホーツク流氷館も網走駅から観光施設を巡る路線バスで回ることができる。冬季も慣れない雪道をレンタカーで走る必要がないのはありがたい。また、冬季は流氷砕氷船おーろら号が出港する道の駅流氷街道網走まで延長運転されている。
おーろら号の出ない道の駅流氷街道網走

おーろら号は欠航になってしまったが、食事とお土産を買うつもりだったので、道の駅流氷街道網走まではやってきた。

全便欠航の表示が虚しい。
船が出れば館内はもっと賑わっていたのだろう。

欠航になったおーろら号、背後のオホーツク海が白波を立てて荒れている様子がわかる。
これだけ波があったら船が出れないのも納得。

道の駅の2階にはキネマ館というレストランがある。その名の通りレトロな映画館がモチーフになっている。

メニューも北海道らしいラインナップ。

カニ飯は1,100円だった。

1階のテイクアウトコーナーのおーろらソフト、おーろら号を添えて。
パチパチ弾けるキャンディーが振り掛けられている。

道の駅から少し網走川の河口方面に歩く。
帽子岩と言われる岩があるあたりが網走川とオホーツク海が合流する場所。
もしおーろら号が出航していればここを通ってオホーツク海に出ていた。
網走の語源と言われる、アイヌ語で祭壇の島の意味のチパシリは、この帽子岩なのではないかという説がある。

河口にあったテトラポッドにいたのはオジロワシだろうか?
Part2へ続く
コメント